昨年夏に竣工した「祖師谷の家」。建て主さんも住まわれてから、早くも半年になりました。
いつものような、東京の木を使った土壁の家です。今回、東京都主催の「多摩産材をつかった家づくり」コンクールに応募したところ、なんと優秀賞を頂きました!
実は、ブログでも完成後の写真等まったくご紹介していなかったので、改めてアップさせていただきます。
以前にも書きましたが、東京都内、準防火地域の19.3坪の土地に建つ住宅です。2階がリビングダイニングキッチンになっています。
東側が道路、南側は私道があるため、開けています。南は広がりを持たせるため、ちょっとしたベランダがあります。防火サッシはガラスが網入りのため、建て主さんの要望で、居間の掃き出し窓は、防火仕様の雨戸として、サッシは普通のものを使っています。
敷地が狭いため、敷地境界ぎりぎりに建てています。北側斜線の制約から、内部は西と北の梁、桁の高さが低くなっていますが、南東に屋根が登っているため、空間的広がりを感じます。
流しとコンロ部分はシステムキッチンを使っていますが、後ろ側のカウンターや収納、キッチンの前の壁などは、すべて大工さんが杉板をはぎ合わせるなどして製作してくれました。
洗面所もこのように、壁も天井も杉板です。
ここは、下地材も含めて、ほとんどすべてが多摩産、東京の木で出来ています。
1階に寝室と水回りがあるのですが、このユーティリティに空いているマドは何だと思いますか?
実は、お風呂からのマドなんです。直接外に面していないけど、外光は入るし、景色も眺められます。
それと、マドを開けると、お風呂の残り湯を洗濯機に直接取り込めるというちょっとした機能まであります。
もうひとつ、ちょっと不思議な開口。
階段にかかるところ、普通なら閉じるのですが、今回は空気の動きも考えて開放してみました。
そのお陰で、暗くなりがちな階段部分がぐっと明るくなりました。
竣工直後なので、まだ外構ができていなくてちょっと淋しい写真ですが、、
外壁は全て杉板貼りです。
南側の掃き出しは1階、2階とも防火雨戸がついています。
雨戸は、断熱などの面でもとても有効なので、もっと活用したいですね。
いつもながら、大工さんの丁寧な仕事が随所に。
階段の滑り止めは、いつもとっても好評です。
こちらは、3月4日に都庁で行われた表彰式の記念写真です。
施工者である町家大工都倉の都倉さんと、多摩産材をいつも供給してくれている浜中材木店の浜中さんと友に参列しました。
浜中さんは、私たちのチーム以外に2チームでも受賞! さすがですね。
こちらは、展示用に作成したプレゼンボード。
審査委員長の松留先生から、「都会の狭小地でもここまでできるという、木の家の可能性をみせてもらった」という内容のお言葉を頂戴しました。
祖師谷の家は、建て主さんの理解としっかりした家づくりへの信念、それに答えてくれる全ての職人さん達の力によってつくられたもの。
こういうかたちで評価をいただけたこと、嬉しく思うと同時に、係ってくださった皆様に心より御礼申し上げます。
その後2月のある日、○○省の方々にも視察頂くことになりましたが、その日居間は暖房なしで室温は18℃、湿度51%でした。
建て主さんによれば、冬でも室内の湿度は45%より下がることはないとのこと。
これも、木と土の家のお陰だと思います。
杉のいい香りと、しっとりと暖かいこの室内環境。
もっと沢山の人たちに体感してもらいたいものです。
建築写真:砺波周平